桜ノ蕾
プロローグ
夢
ヒラヒラと桜が舞う。
隣を見ると男が桜を見上げていた。
彼は私の視線に気づいてこちらを向く。
微笑んだその顔には、優しさと悲しみを浮かべていた。
私も顔をほころばせ、彼の頬へと手を伸ばす。
指先が頬に触れた瞬間、彼は花びらとなって舞い散った。
どんなに周りを探しても、声を枯らして名前を呼んでも、彼はもう何処にもいない。
指先に微かに残った感触もだんだんと消えてゆく。
私はその場に座り込み、声を出さずに泣いた。
今、貴方はどこにいるの?
何で私の隣にいないの?
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