桜ノ蕾
百合の毒
「まだ顔熱い……」
次の日、私はまた林へ来ていた。
昨日はあれからとりとめのない話をして、日が傾き始めた頃に殿とは別れた。
今日も朝から小夜ちゃんの手伝いをしていたけど、ふとした時に約束の事を思い出しては赤面していた。
何でか殿の事を思い出すとドキドキする。
秀の事を思い出す時と似ているけどちょっと違う気もする。
何か私おかしくなってるよ。
ため息をついて視線を横にずらす。
そこには例のイチョウの木があった。
まぁ、何はともあれ紅葉を見るのは楽しみなんだよね。
近づいて木の幹に腕を回してみると、私の腕では抱え込めなかった。
やっぱり凄く立派な木だ。
「ちゃんと秋には綺麗に色付いてね」