桜ノ蕾
「あれ? いない」
次の日、いつもの時間に林へ来ると殿の姿がなかった。
何で今日はいないんだろう?
最近ずっといたのに。
あの事故以来殿は毎日のようにここにいた。
必ず私が来る前にいる。
こんなに頻繁にここに来て大丈夫なのかと思う反面、彼が来てくれていることが物凄く嬉しいかった。
すれ違い気味だった彼と必ず毎日会えるのだ。
恋する乙女としては胸が踊らないわけがない。
が、それと同時にいなかった時のダメージも半端ないようだ。
私は仕方なく小夜ちゃんの元に向かうことにした。
「小夜ちゃーん」
私が駆け寄ると小夜ちゃんは振り返ってニッコリと笑った。
「蕾様ではないですか」
「仕事終わったところ?」
「はい。夕食の準備までは特に何もありませんよ」
「そっか。じゃあちょっと付き合ってくれない?」
「ええもちろん」