あの日の記憶
おとうさん




医者が待合室から出て行くと、看護師が来た。


お母さんと看護師が少し話をした後、お母さんが


「お父さんに会えるんやて。でも、小学生は入られへんから看護師さんが説得してくれるねんて。」


と言う。話によると結構な時間がかかるみたいだった。


私と弟はお父さんに手紙を書くことにした。


私は

「また手術で治って、私が中学生になる頃にはまた同じ生活が戻ってくるんだろうなぁ…」

とも思いつつも少しこった絵を書いて、文を書いた。

お父さんへ


大丈夫ですか?


最初に、聞いた時はめっちゃびっくりしたで!


はよ治してな♡


また来るわ!お大事に〜〜!


♡あやより♡


「よしっ!これで完璧」


絵はかなりの自信作だ。


でも、こう言う状況で言うことでもないな。


弟も書き終わった様子で、また沈黙が訪れた。


看護師に聞くと、まだ時間がかかるそうだ。


私は

「ちょ、ちょっとコンビニ行ってくる!」


「ばぁば。行こ?」


と、病院の1階にあるコンビニへ向かった。


私は、みんなの分の飲み物とチョコレート。パンを買った。


私が帰って来てからしばらくすると


「大変待たせてすみません。こちらへどうぞ。」


と看護師が来た。


「やっとだぁ…」

と思いつつ、集合治療室の中へと入る。


手を洗い、消毒をしてマスクをつけた。


中へ入ると、寝たきりで点滴をしているおばあさんや、
足を骨折していて寝ているおじさんなど。


沢山の病人がいた。


少し歩くと、看護師は緑のカーテンで仕切られているベッドの前に来た。



「勝三さんは、今沢山のチューブで繋がれています。なので踏まないように注意してください。」



と、言った後に弟と私の前でしゃがんで


「お父さんは、意識はないけど声は聞こえていると思います。言いたいことを伝えてね」


と言われた。


私は

「いざ悪口を言ってやる!」


と思っていた。


あのカーテンが開くまでは…
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