癒し恋~優しく包まれて~
疲れている原因は入江さんだけど、今は気遣ってくれる優しさに感謝。


「どうしたの? ココア握りしめて」


デスクに座って缶を両手で包み、温かさに和んでいたら、萌絵さんが不思議そうに聞いてきた。


「あ、お疲れさまと入江さんからもらったんですけど、あったかいなーと思って」

「じゃあ、温かいうに飲んだら? でも、入江さんが誰かにそんなことをするなんて珍しい」


ギュッと結んでいた口が開いたことで表情までもが緩む。入江さんの行動のひとつひとつに一喜一憂されている自分に渇を入れたくなるけど、ココアに罪はない。

プルタブを持ち上げて、ココアを飲む。疲れた心を癒してくれるかのような温かさが体の中に染み込んでいく。

確認しなければいけないとは思うものの、気にしないようにして、優しさだけを受け止めればいいのかもしれないとも思ってしまう。

多分その方が心はらくになる。

入江さんが話そうとしないことをわざわざ聞き出して、辛い思いをしなくてもいいかも。

与えてくれる優しさだけを信じていたらいい。

でも、本当にそれでいい?

あとで後悔しない?

いろんな思いを葛藤させて、ぬるくなったココアを一気に飲み干した。
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