どんな君でも愛してる
 そう言われて提案されたことが、

ー会員制ラウンジに来る全ての客、従業員の素行評価ー

だったのだ。

「暫く様子を見て、二週間に1回、この八木にメールを入れてくれればそれでいい。気になる噂や言動があれば都度連絡という形を取りたい。どうだろう?わたしの力になってはくれないだろうか?」

 真摯な目でみつめられ、咄嗟に、"わかりました"と言ってしまった。

 住むところも準備され、仕事は20時から0時までなのにお給料は馬鹿高い、至れり尽くせり状態だ。

 ヨーロッパから帰ってきて間もない瑠璃は、目の前にいる初老の男性と八木と言わた男性が誰かは知らない。

 もちろん、これから働く場所「B.C. square TOKYO」がどんなところかもわからない。

 それに、そのおかげで、運命の相手に出会うとは夢にも思っていない。

 相嶋瑠璃(アイジマルリ)25歳。中学を卒業後、単身でヨーロッパに渡り音楽の道を極める。

 得意な楽器はピアノ。本当はバレリーナになる筈が、両親と事故にあいプロで踊ることは難しくなったが、命はとりとめた。

 オーケストラのピアノ契約がきれると共に、B.C. square TOKYO会員制ラウンジのピアニストに採用。

 初老の男性の後ろにいる八木の手帳にはそう記されていた。
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