誰かのための物語

合宿は、終わってみるとあっという間だった。

あの三日目の試合が終わったあと、僕は監督にこう言われた。


『一皮むけたな、日比野』


監督が言うには、今の僕は野生児っぽくていいらしい。

相手にとって十分『こわい』プレイヤーだと。


そんな奴の存在は、チームにとってはでかい、と。


『お前らもっと、野生児にならなあかんぞ。

ゴールを奪うための嗅覚を研ぎ澄ますんや。

今日、そんなゴールがあったな。

そういう野生児的なプレーが、俺らを全国に連
れてってくれるかもわからんぞ』


その日のミーティングで、監督は僕の名前こそ出さなかったがそう言っていた。


 
僕は次の日から後半だけだけど試合に出るようになり、最終日にはスタートからも出た。
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