誰かのための物語

6

僕は、もうあの夢を見ることはないのだと思う。


あのあと、転校生の女の子は別の学校に転校していくことになる。

そのとき僕は約束した。

君に必ず、会いに行くって。

彼女と、ゆびきりをしたんだ。


彼女が引っ越した先は、僕が通う高校のある町。


僕がそのあと記憶を失ってさえいなければ、いくらでも会いに行けるところにいたんだ、彼女は。


僕は唇を噛み締めながら、電車に揺られていた。




鞄の中にはあのノートと、医学書が一冊だけ入っている。

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