誰かのための物語

7

やっぱり、病は気からなんだと思う。



それから私の病気は、少しずつよくなっていった。


生きる希望を、病気を回復させるモチベーションを得たからだろう。


そしてついに、高校三年生になる春、待ちに待った日がやってきた。


彼のいる学校に転入することになったのだ。


先生に促されて教室に入ったとき、すぐに彼を見つけた。



その瞬間、心が躍った。


黒板の前で挨拶をする前、彼と目が合った気がする。


そのあとも私は、視界の右端で彼の姿をずっと見ていた。



私たちは、隣の席になった。


そのことは、夢で見たからもう知っていた。


彼が右手にギプスを巻いていることも、席に着くとき、私たちが交わすのは軽い会釈だけだっ
たことも。


立樹くん、久しぶり。やっと、会えたね。


私はそう言いたかったけど、ぐっとその言葉を飲み込んだ。


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