誰かのための物語

その日の部活中、僕は自分の可能性を探していた。


チームのため、仲間のため、監督のため。

そのみんなと喜びを共有したい自分のために、自分にできることはなんだろう。
 


……試合に出るしかない。


スタメンになるために練習をがんばるのではない。

ただ、試合に出ること以外に僕の可能性を見出したとしたら、それは逃げになる。


だから僕は、あくまで選手として、チームに貢献したいと思った。


もうすぐ夏休みに入る。
そこでたくさん練習試合をする機会があるから、まずはそこで少しでも多く試合の経験を積みたい。


そんな思いで、練習に臨んでいた。


また、AチームとBチームのゲーム形式の練習だ。

僕はまだBチーム。ガムシャラにがんばるのではなく、自分のできることを探してそれに集中する。


僕にできることは、なんだろう。自分に、できることは……。



そこで、考えた。僕がディフェンダーを好んでしているのはなぜなのか。

それは、攻めることよりも守ることに、選手としてのやりがいを感じているからだ。



相手の攻めからゴールを守り続けると、いつかはボールを奪い返すチャンスがやってくる。


僕はその瞬間を思い描きながら、ボールと、相手の動きを目で追っていた。
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