恋人は魔王様
13.忘れられた告白
それは、一月以上前に遡る。

もちろん、世界には、魔界・天界・人間界の三つの世界があるなんて知る、ずっと前のお話だ。

ああ、今思えばあの頃の私は平和だったとしか言いようが無いけれど。
もちろん、そんなこと知る由もない私にとっては、始まったばかりの高校生活はそれはそれでばたばたしたものだったのだ。

「ちょっと、宜しいですか?」

見覚えのある人が、放課後、帰ろうとしていた私のところにやってきた。
同じ高校の制服だから、同じ高校の人だろうというのは容易に想像がつく。

見た感じで年上だということも、男性だということも分かった。

「はい?」

私は首を捻る。

誰だったっけな、と、記憶を辿っていたので、その人の名札を見ることは忘れていた。

「生徒会長だよ」

「ああ、生徒会長さん」

私はにこりと笑って見せた。
とりあえず、人を見たら笑っておけばよい、というのが私の母の教えなのだ。

「僕と付き合ってくれないかな」

「ゴメンナサイ」

とりあえず、突然現れた人がタイプで無い場合、何か頼みごとをしてきたら、ゴメンナサイといって走って逃げろというのも同じく母の教えであって。

私はそのとき、素直に母の教えに従った。

ちなみに。
これが【タイプの人】であった場合には、ルールは大幅に変更される。

ま、詳しく知りたい方はうちのママに問い合わせてみるといいわ。
それに従ったからって人生がうまく回るという保証はまったくないけどね。
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