恋人は魔王様
きょとんとしている私を見て、マリアは出来の悪い生徒に頭を抱える教師みたいな顔になった。
ただ、それは教師としては絶対にしてはいけないような表情……つまり、生徒を完全に馬鹿にしている顔……になっていたけれども。

「あなたはね、そもそも最初ユリの花だったのよ。
ま、種って言ってもいいんだけど」

は?
私は話しについていけない。

だいたい、あなたは最初ユリだった、何て言われて即座に「へぇー、知らなかったー☆どうりでユリの花を見たら他人だって感じがしなかったんですよねー」なんて笑顔で答えることが出来る人って一万人に一人もいないと思うけど。
多分。

でも、マリアの瞳は珍獣をみるそれになっていた。


「あのさ、アダムとイブがエデンの園を追われた時に、イブの流した涙が地上に落ちて、そこからユリの花が咲いたって話は知ってるわよね?」

今の日本の総理大臣の名前くらいは知ってるわよね?という常識を問うような顔で、マリアが聞く。

私は力なく首を横に振るほか無い。

マリアは心から驚いていた。

「ねぇ、そういうことも知らないんだったら、もう、魔王のこと自体忘れているって公言したほうが良くないかしら?」

私は別に、構いませんけど?!

頭痛が極限に達してきた私は、その案に乗ろうかと一瞬本気で考えた。

< 138 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop