恋人は魔王様
上から眺めた私は、周りの女の子たちと同じようにうっとりと甘い吐息をついてしまっていた。

遠いので、顔の細部まで見えるわけではないのだけれど、背が高くて、なんていうか、雰囲気からしてオーラがある。

舞台やライブで見る芸能人の存在感に圧倒されることってない?
そう、あの感じ。

他を威圧するというか、引き込むというか、魅惑的というか。

一言で言えば『目が離せない』。

釘付けになっちゃったわけですよ、ええ。



と。
そいつが、ふと上を見上げた。

「きゃぁあっ」

コンサートさながらの歓声があがる。

もしかしたら、私と笑麗奈が知らないだけで彼は有名な芸能人なのかもしれない。

そして、今は謎のロケ中?



そんな風に思っていたら、急にそいつと目が合った。

『早くおいで』

そして、あれほど遠いのに、耳元にそんな声が聞こえてきたのだ。

低く、深く響くような、声が。



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