恋人は魔王様
うっかり雰囲気に飲まれ、この美形サイコな『魔王様』に涙まで見せてしまったことを深く反省し、とりあえずキョウの腕から抜け出して、ソファに座る。

何故か二人掛けなので、隣をキョウにすすめてみる。

まぁ、私が勧めなくても彼は当然のように座ったでしょうけど。



しかし、まぁ。

ヴェルサイユ宮殿のなんとかの間を意識してインテリアを揃えたというこの部屋に、これほどまでにマッチする人も見たことがない。

黒いジャケットを脱いだキョウは、黒いシャツの袖をまくってネクタイを緩めながらふぅと息を吐いた。

透き通るような白い肌、エキゾチックな黒い瞳、近くで見る睫毛は思った以上に長く、鼻は綺麗に筋が通っている。


もちろん、このヨーロッパティスト満載なピンクを貴重にした部屋のインテリアもひとえにママの趣味だ。
この家の中心はママでしかない。


魅惑的な紅い唇が、私を見て微笑んだ。

「見てるだけで、いいの?」

官能的な部分に直接呼びかけるような、ぞくっとするほど低い声が心地よく響く。


……なななななっ


「じゅじゅじゅ、十分ですっっ」

隠し切れない動揺に、耳まで赤くした私を見て、ふわり、と、キョウが笑う。

だいたい、この人、なんでネクタイ外して袖までめくって!!!!
な、何をしようとされているのかしら?!




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