桜舞い散るとき、キミは涙する

* * * * * *

美桜さんの話を聞いてから、早くも一週間が経とうとしていた。

保志君からの連絡はもちろん無い。


なんとなく日課となってしまった、携帯電話のメール問い合わせボタンを押すと『新着メールはありません』と、無機質な文章が画面に表示された。


用もないのに、メールなんてくるわけないよね。

今まで優しくしてくれたのだって、私が単に美桜さんに似てたからなのに。


頭ではわかっていても、落胆の色を隠せない。


「そんなに似てるのかなぁ……」


ため息をつきながら、洗面台の大きな鏡に映る自分とにらめっこする。


「似てるって言われても、私はちっとも美人じゃないし」


清水君は、会話をすると私と美桜さんは全然別人だと言っていた。


それってばつまり、オーラとか麗(うるわ)しさとか華やかさが、私には無いってことなのかな。


「そもそも名前からして『桜』だもんなぁ。私なんて紅花(べにばな)なのに」


紅花も可愛い花だけれど、食用のイメージが強いせいか、日本の象徴でもある桜と比べると、どうしたって見劣りしてしまう。


でもまぁ実際私も『花より団子』だから、あながち間違いでもないんだけど。
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