私を助けてくれた青年が異世界の貴族だった件
タイトル未編集

異世界から来た青年

異世界から来た青年は賑やかな街の通りを歩いていた。
この国では少し目立つ輝く金髪、夕日の様な暁色の瞳。前髪が上がっていて、不謹慎そうな雰囲気を漂わせている。
いつもは鋭く、厳しい瞳も今日は少し楽しそうだ、まるで淡い期待を抱いている様にも見えた。
もう4月にも拘わらず、今年は少し肌寒い。
青年は早春用と思われる青いコートを着ていた。
コートのボタンは閉められてなく、ワイシャツの上に青いジャケットを着ている事が見える。
青いネクタイを着けている事からして、彼が野暮用を済ました後だと想像出来る。
ズボンもジャケットもネクタイもコートも濃い青色のところ彼は青が好きなのだろう。
もう午後11時に拘わらず街は賑わっていた。
当然と言えば当然だ。何せここは銀座の1番人が集まる通りなのだから。
そんな派手で人の集まる賑やかな町でも、路地は夜の静寂(しじま)に包まれていていささか寂しくなる。
彼は路地に入って行く。
大通りには多種多様な建物が並んでいたが、路地の壁は全て灰色でまるで違う街に居るみたいだ。
「放して!」
路地の奥から女性の声が聞こえた。
「大声出さないでよー。お兄さん達はただ一緒に遊ぼうって誘っただけじゃん。」
今度は男性の声が聞こえた。
青年は今気分が良く、もし彼女が困っているのなら助けようと思った。まあ、今の会話からして、彼女は確実に困っているだろう。
青年は路地の奥に進んでいった。
思ったとおりだ。
3人の20代前半と思われる男性に16歳と思われる女性が絡まれていた。
1人の男性が強引に彼女の手を引き、もう1人の男性は車のドアを開けている。最後の1人は辺りを見張っている。
青年はコホンと咳払いをして、彼らの注意を自分に集めた。
勿論青年は2秒程しか彼らの気を引く事が出来なかった。
でも彼女は青年が稼げた2秒を無駄にする事なく、彼女を掴んでいた男の手を振り解き、青年の居る方に全力疾走した。
青年の居る方に全力疾走した理由は簡単だ。彼を信じたとかそう言うのでは無く、ただ単に他の通路を車が塞いでいて、袋小路状態だったからだ。
逃げようとする彼女の腕を辺を見張っていた男が掴んだ。
彼女はバランスを崩し、倒れる。
彼女は手を振り解こうとするが、彼女が思っていたより男は強く掴んでいた。
青年は男の手首を強く握り、痛みで男は彼女を掴んでいた手を離してしまう。
彼女は素早く立ち、路地を抜ける。
「おい!何逃がしてるんだ!」
男が青年の襟を掴む、他の二人の男も彼を囲む様に立つ。
「何黙ってんだ!痛い目みたいのか!?」
青年の襟を掴んでいる男が怒鳴る。
「痛い目みるのはお前達だ。」青年が冷静に言った言葉には気迫が籠っていた。
刹那、青年の襟を掴んでいた男が宙に浮いたと思いきや、壁に勢い良くぶつかり倒れ込んだ。
青年は襟を直しながら、他の二人の男の方を向いた。「お前達はどうする?」青年は冷静な、殺気の籠もった声で訊いた。
二人の男は顔を青くして、失神している男を車に入れ、車に乗って逃げて行った。
彼は溜息をすると、路地の曲がり角に目を向けた。
角から先程青年が助けた女性が出てきた。その黒いストレートな髪は腰まであって、瞳の色は紅色、睫は長くクルンとしていて、一言で言えば彼女は美しかった。
学校帰りか、白黒のセーラ服を着ていた。スカートもシャツも黒色だが、襟やスカートのフリル、胸元のリボンは白色だった。
「さっきは助けてくれてありがとうございます。単刀直入に訊きますけど、もしかして貴方魔術師ですか?」

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