過去ポスト
☆☆☆

ポストを確認しながら自転車をこいでいると、潮の香が鼻をかすめた。


太陽は徐々に傾いていて、街はもうすぐオレンジ色を無くし、黒く塗りつぶされてしまう時刻。


そろそろ帰ろうか。


そう思っている矢先の事だった。


あたしは自転車を止めて息を吸い込んだ。


風が強く空気は少しベタついていて、海が近い事を表している。


夏と行ったあの海がもうすぐそこまで迫ってきていた。


家から真っ直ぐ来ても自転車で1時間ほどかかるこの場所に気が付けば来てしまっていた。


あたしは少し迷ってから、再びペダルをこぎ始めた。


少しだけ海を見てみよう。


海を見て、すぐに帰ればいい。


そう思っている間にペダルをこぐ力が強くなっていた。


グングン前へ進んでいく自転車。


それにつられるそうにして前方に海が現れた。


オレンジ色の太陽に照らされ、キラキラと輝く海。


「夏……!」


あたしは思わずそう口走っていた。
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