過去ポスト
「夢の中で亡くなった夏君に会ったのかもしれないですね」


お医者さんの言葉の意味が理解できなかった。


夢の中?


違う。


あたしは確かに夏と会っていた。


抱きしめられた感触が、今もしっかりと残っているんだから。


しかし同時に夏が消えて行った瞬間の事も思い出してしまった。


夏はあたしのから消えてしまった。


「自分がどうして海の中へ入って行ったのか、覚えてる?」


お医者さんにそう聞かれて、あたしは頷いた。


夏に会いたかった。


夏がいなくなった海に入れば、夏に会えると思った。


「詳しい話は、体力が回復してからにしましょう」


お医者さんが両親へ向けてそう言っているのを聞きながら、あたしは再び眠りについたのだった。
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