豹変カレシのあまあまな暴走が止まりませんっ!
耳にヘッドフォンを当てて、ガンガンの音量で音楽を流す。
恰好良いバンドの、ちょっと暑苦しいロックミュージック。
この音なら、隣の部屋でどんなに大きな物音がしても、聞こえることはない。

そういえば、このバンド、玲のお勧めだったんだよな。

余計なことを思い出して、じわりと涙が滲む。

何をやっても玲、玲、玲。
結局、私にとっての玲は、どんなに毒舌だろうが悪態だろうが、そんなこと関係なく欠かせない存在で。

せっかく一瞬でも彼女にしてもらったんだから。
キスの一つくらい、せがんでおけばよかった。

あるいは、既成事実作っちゃって、妊娠しましたとか言えば傍に居てもらえたかな。
このお腹の出具合だ。きっと五か月くらいは騙し通せる。

もしくは、裸になった玲を写真に収めて、脅してみるとか――って、ダメじゃん、どんどん犯罪の方に行っちゃってる。

だって、こんな『ぶちゃ』な私が玲を繋ぎとめておくなんて、犯罪でも侵さない限り無理だよぉ。

あんな美人でスタイルの良い女の人に、勝てるわけないじゃん。

今度は滲むどころか、涙がぼろぼろと零れ落ちてきて。
今頃、玲が他の女の人に優しく触れてるって思うと、どうしようもなく苦しくなる。
ちょっと前までの玲は、私のものだったはずなのに。


出来ることなら、もう一度、私を恋人にしてくれたあの日に時間を巻き戻したい。
そうしたらもう少し、私、素行良くするから。
ダイエットとか、真剣に考えるから。
こっそり甘い物、食べようなんて考えないから。

美味しいチョコレートより、生クリームより、パンケーキより。
私は玲の方が好き。


私は毛布にくるまって、ただただ時間が流れてくれるのを待った。
ずっとずっと泣いていたら、『ぶちゃ』な顔は余計に『ぶちゃ』になって、朝には目も当てられないくらい腫れぼったくなっていた。
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