年下彼氏とSweet Life


加藤君の高校は、都立なのに、サッカーの強豪だ。

今日の試合相手は、なんとK大付属高校だった。

聖のことが頭をよぎったが、会わないだろうと高を括っていた(くくっていた)。

聖から、サッカーの『サ』の字も聞いたことがないから。




前半は、1対1のタイだった。

休憩に、馨と飲み物を買いに、自販機に行くと、そこに聖がいた。

目が合うと、私は、踵を返して来た道を戻った。

私は、小さな声で、『見ないで、見ないで……』と繰り返す。

引きずる足で歩く姿を、見せたくはなかった。

馨が、聖に気がつき、後を付いてきてくれた。

聖の隣には、聖と腕を組んだ可愛い女の子がいたのだ。

私は、心臓をわしづかみにされているような痛みを味わっていた。

聖とのことに終止符を打ったのは、私なのに、他の女の子といる聖を見て、ショックを受けている。

なんて、自分本位なんだろう。

私は、ピアノだけに生きると決めたはず。

でも、涙は、止まってはくれない。

応援席に戻り、私は、試合を応援することはできなかった。

黙って、馨が、肩を抱いてくれていた。
< 77 / 103 >

この作品をシェア

pagetop