シンデレラクリニック
医療者の合コン
私の名前は北村汐莉。26歳。総合病院付属の看護専門学校を卒業し、エスカレーター式に就職。内科・小児科病棟に配属されて5年目の看護師だ。看護学生時代にした研修医との恋愛は大失恋に終わり、それからは仕事一筋。同期達は医者の奥様になることを夢見て必死にアピールしているけど、私は医者なんて大嫌い。恋愛対象外だ。
「汐莉」「今日、小児科の池田先生たちと飲みに行くんだけど、人数足りなくてさ。頭貸して。お願い」同期の亜希子だ。私が合コン嫌いなのも、学生時代に研修医と恋愛して失恋したことも知っているくせに、よくもまあ懲りずに誘ってくるものだ。「嫌だって言うのわかってるでしょ。他をあたって」いつものように断ると、すかさず亜希子は「お願い。奢るから。今回だけでいいから」亜希子は池田先生にお熱なのだ。いつもは誰とでも卒なく仕事をこなしているくせに、池田先生の前では妙に張り切っている。バレバレだ。「亜希子、池田先生が好きなんでしょ。認めな。そしたら影武者役引受けてあげる」亜希子は顔を真っ赤にしてコクリと頷いた。「今日は妙に素直なのね。わかった。今回だけね」
「やったー!汐莉ありがとう」

「カンパーイ!!!」池田先生率いる医局新人メンバーとナース4:4の飲み会が始まった。
お酒が入ってくると、亜希子は池田先生の横をガッチリキープして楽しそうにしている。他のメンバーたちも楽しそうに話している。私は端っこの席でひたすらオレンジジュースを飲んでいると、外科の山口先生が声をかけてきた。「北村さん。今日はお酒飲まないんですか?」山口先生とは、先生が研修医時代に内科・小児科病棟に研修にきたとき以来だ。優しくて、小児科の子どもたちに大人気だった先生だ。「はい。明日、早番なので」「そっか。実は僕も今日当直で、呼ばれたら行かなきゃならないんだ。雄輔にどうしてもって言われたから、仕方なくきたんだけど、飲めないしさ。雄輔もお目当ての人と楽しそうにしているし、北村さん、よかったらここから出て別のお店に行かない?ごちそうするから」雄輔とは池田先生の名前。「池田先生って、亜希子のことが好きなんですか?」私は思わず山口先生に尋ねた。「雄輔のやつ、高橋さんのことが好きで内科・小児科病棟に行ったようなもんなんだよ。連絡先を聞きたいけどどうしたらいいかって悩んでてさ」私は思わず笑ってしまった「山口先生、池田先生に、亜希子ならストレートに聞けば大丈夫ですよ。って言ってあげてください。私達はお邪魔なようですね。帰りましょうか。」
私は亜希子に断り、山口先生と一緒にお店を出た。すると、山口先生の電話が鳴る。どうやら病院からの呼び出しのようだ。「北村さんごめん。行かなきゃ。」「はい。気をつけて」山口先生を見送ると、私は独り家に向かった。駅までの道を歩いていると、人だかりができている。近くに行ってみると、男の人が倒れているようだ。私は急いで救急車を呼ぶと一緒に乗り、自分の働く病院に運ぶように指示した。救急車の中で意識を取り戻した彼。「笹川和徳。42歳です。すみません。急にめまいがしたと思ったら。」救急隊員の質問に淡々と答える彼。ひとまず安心する私。
病院に到着すると、立て続けに救急車が来たようで大忙しの様子。さっき別れた山口先生も忙しそうに働いている。山口先生と一通りの処置を行い、笹川さんは入院することになった。私が家に帰るころには夜中の3時になっていた。

翌朝、出勤すると病棟師長の本藤さんに声をかけられた。
「昨日はお疲れ様。大変だったみたいね。それで、昨日あなたが救急車で連れてきた患者さんなんだけど、あなたに会いたいって言ってるらしいの。あとでいいから、顔を出してきてくれる?」

私は、お昼休みに笹川さんの病室を訪ねた。

「お呼び出ししてすみません。昨日はありがとうございました。」笹川さんはとても元気そうだった。「誰かに似てる。でも、誰だろう?」考えていると、テレビに出ている人だということがわかった。「あの、もしかして俳優の佐々木貴洋さんですか?」聞くと、笹川さんはニコリと微笑んだ。
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