冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「このままでよい。お前をもっと知りたいからな」


膝の上でなくても話はできますって!

彼は私の長い髪が気に入ってくれたのか、何度も何度も触れてくる。


「サノワはあっちの方向だな」

「はい」


王太子さまはそう言いながら、太陽が沈みつつある西の方を指差した。

燃えるような橙色の空は、明日の天気のよさを示している。
サノワでも見たことがある光景を前にして、サノワが平穏でありますようにと祈らずにはいられなかった。


「寂しいか?」

「いえ。王太子さまにこれほどにまでよくしていただき、寂しいわけがありません」


本当は母やアリアナ、そして、面倒を見ていた子供たちのことが気になっていた。

でも、おそらくもうすぐサノワに帰される。
そうしたらまた会える。
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