星の涙
金魚すくいでとってくれていた金魚は、颯太くんが持ったままだった。

でも、どうせ来れなかったえれなに、おみやげにしてあげようと思っていたのだ。颯太くんが直接えれなに渡せばいいと思った。

部屋に入ってベッドに座りこんだとき、足が痛いことに気づいた。

慣れない下駄をはいてたくさん歩いたせいか、右足の小指の付け根あたりがすれて皮がめくれ、血がにじんでいた。

切り傷ではない、こすれているうちに時間をかけてできた小さな傷。小さいのに、ずきずき痛むその傷は、わたしの心にできたものと同じだと思った。

わたしはスマホで写真をとった。裸足の足をあまりアップにするのは恥ずかしくて、モノクロに加工する。そして傷の部分の赤だけ、色をつけた。

『傷つくってわかってたのに。うかれてばかみたいなわたし』

ポストすると、すぐにえれなにLINEした。

『風邪大丈夫? わたしはまさかの颯太くんとふたりきりで気まずかった』

えれなからすぐ返事が来る。

『そう? 楽しかったんじゃない? 』 

『人がいっぱいいて、疲れたよ』

『毎年すごいもんね』 

『颯太くんが金魚すくいではりきっていっぱいとってたよ。えれなへのお土産だから、颯太くんが直接くれると思う』

それだけ送って、どっと疲れた。もう今日はダメだと思った。

『疲れたから、もう寝るね。おやすみ』

メッセージを送ると、スマホを放り出し、ベッドに横になった。

「あーーもう!」

颯太くんとお祭りに行ったのが、はるか遠い昔のことのように思えた。

あんず飴も、金魚すくいも、壁ドンも。

もう私の思い出ではなく、昔のドラマで見たワンシーンだったんじゃないかと思うほど、遠い遠い出来事のようだった。
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