一輪の花を君に。
それから、しばらくして私は、ようやく落ち着いた。



「美空。」



「…千鶴先生。」




「大丈夫?苦しくない?」




「はい。」




「美空。やっぱり私、呼吸器内科に移れないか相談してみる。」




七瀬先生は、私が過呼吸を起こしたことを聞いて、駆けつけてくれたみたいだった。




「でも…先生には小児科が…」





「美空の方が、よっぽど大事。こんな言い方、小児科にいる子達に不謹慎だけど、やっぱり美空は、私の大事な娘と同じような感じだから、美空の治療のことを優先したい。他の医師に任せることなんてしなければ、美空がこんなに苦しむこともなかったのにね。ごめんね、美空。」





「七瀬先生。」




「だめよ。」




「え?」




「それはダメ。」




「千鶴先生?」



七瀬先生も、大翔も何より、私も驚いている。





「ねぇ、美空。

あなたが負った心の深い傷は、完璧に修復することなんてできない。けどね、大人の男性を怖がって生きていたらダメよ。これから、美空は社会に出る。そこには、美空よりもっと年上の男性だっている。その中で生きていかないといけない。トラウマは、早いうちに乗り越えた方がいいに決まってる。もちろん、簡単なことじゃない。けど、皆で美空を支えていけば、美空だって乗り越えることができる。今までも、そうやってきたんだから。」






「今が、リハビリの時期ってことですか。」





「そう。」





「美空?中森先生は、美空の事を傷つけたりなんてしない。だから、美空も。少しずつでいいから、中森先生のことを信じてみよう?」





「分かってます…。私も、リハビリだと思って頑張ってみます。」





「美空も、成長したね。」





七瀬先生は、そう言って私の髪を整えるように撫でた。





なんか、疲れたな。





「先生?寝てもいいですか?」





「今日は、色んな事があったものね。寝ていいわよ。」





「お休みなさい。」




「お休み。」




私は、手に七瀬先生の温もりを感じながら、深い眠りについた。
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