一輪の花を君に。
「美空。


自分を攻めても、何の解決にもならないよ。
大切なのは、美空の素直な心。


正直な気持ちだよ?」





「正直な気持ち?」





「色んな事があって、今の美空がいるんだ。美空も、信用できる大人ができたんだから自分に嘘はつかないで、素直に甘えたり感情をぶつけて来てほしい。」






感情をぶつけてきてほしいと言われても。






どう、それに答えていいのか分かんない。






でも、私は気づいたら涙が溢れ出していた。






何で?





どうして涙が出るの?





「どう…して?」





「ん?」





「涙が…止まらないの?」






「美空。それだけ、頑張ってきた証だよ。」






「え?」







「今まで、頑張ってきたんだから。色んな事我慢しながら生きてきたんだよな。でもな、もう我慢しなくていいんだ。これから、美空にはたくさんの幸せが待っている。俺と一緒にさ、キラキラした思い出をたくさん作っていかない?


辛かった過去より、これからの幸せのために何が出来るか。どうしたいのか。その事を、考えていこう。」






私を抱きしめる先生の手の温もりが、優しくて一言一言に重みを感じた。





「うん…。」





「それからさ、辛かったらいつでも泣いていいんだ。だけど、1人で泣かないでほしい。辛い気持ちに、俺は寄り添っていきたいんだ。」






「でも…。」






「誰かに、寄りかかって頼って生きていいんじゃないのか?


人は、1人では生きられない。



何らかの形で、助け合って生きているんだ。」






先生の言葉は、私の心を紐解いていくように不安がかき消されていった。






私は、しばらく先生の胸に頭を預けた。
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