一輪の花を君に。

それから、2週間経ち気づけば厳しい寒さもなくなり、春を迎えていた。





「美空、退院が決まったよ。」






「本当ですか?」





「ああ。


2週間の約束だったからな。



正直、まだ発作が起きるかもしれない。




だから、我慢しないで何かあったらすぐに呼んで。」







「はい。」







「美空ー!



退院おめでとう!」







部屋に、飛び込むように入ってきたのは大翔君達と七瀬先生だった。






「七瀬先生、ちょっとお話いいですか?」







「はい。


美空、着替え終わったら大翔達と待っていてね。」




「はい。」


俺は、七瀬先生を連れて美空の部屋を後にした。






「あの、美空のこれからのことなんですけど。」






「これからのこと?」





俺は、七瀬先生を医局の隣の部屋にあるカンファレンス室へ誘導した。








「はい。



実は、あまり治療の効果が見られませんでした。」








「えっ?」







「回復どころか、喘息が悪化していると考えて下さい。」







「そう…でしたか。」






「正直言うと、退院は先延ばしにしたかったんですけど、治療を頑張ってくれた美空に、そんなこと言えませんでした。



はっきり言って、子供達だけで暮らすとなると美空に色んなリスクを背負わせてしまうと思うんです。



本当は、俺が美空の事をそばで見ていきたいっていう気持ちが1番なんですけど、それはできないと思うので…。




それで、通院の回数を増やして様子を見ていきたいと思うんです。




週3のペースで、吸入をしに来てほしいと考えています。



それでも、よろしいでしょうか?」








「そうでしたか。



分かりました。」






通院の回数を増やすことは、美空にとっても大変なことなんだろうな。





すると、いきなり扉が開いた。






「やっぱり、そうだったんですね。」





話を全て聞いていたかのように、平然とした顔で入ってきた大翔君。






「大翔!

どうしてここが分かったの?」








「盗み聞きなんて、タチの悪いことをしてすみませんでした。



だけど、中森先生が七瀬先生を連れ出した時、美空のことに対して、悪い知らせでもあるかと思ったんです。



美空は、まだその事を知らないんですよね?」



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