柏木達也の憂い
「私は柏木くんのデザイン好きだけどな」
顎に手を置きながら、俺が向き合っている図面をじっくりと見つめている仕草が色っぽい。何を場違いなことを考えてるんだ、と自分にツッコミをいれながら
「でも、求めてないって言われちゃって」
美智子さんに向き合って、愚痴をこぼしてしまった。
いくら先輩といえども女の人に弱音を吐くなんてカッコ悪すぎだけど、もうそんなことを言ってる余裕なんてないくらい参っていたのだ。
俺に声をかけてくれた美智子さんは、真剣に見つめていた図面から視線を外して
「クライアントの求めてることって、ちゃんとわかってる?」
そう問いかけてくる。
「それがわりと、ざっくりなんですよ。リビングに陽が入る明るい家がいいって」
そこまで言って、美智子さんを見ると続けて、と先を促される。