メガネの王子様
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只今の時刻は12時55分。

ちょうど体育館の真ん中の1番端の席に、私、陽葵、健ちゃんの準備で椅子に座って次の公演が始まるのを待っていた。

あと5分で清宮先輩たちのバンド演奏が始まる。

体育館は立ち見の人が居るくらい大盛況だ。

ぐるっと一周見渡せば、ほぼ女の子で埋めつくされていた。

さすが、清宮先輩。

モテますな。

しばらくすると灯りが落とされ、暗幕が上がると同時にステージにライトが当てられた。

清宮先輩と3人の男の人が現れ「ワー」と歓声があがる。

センターでギターを持った清宮先輩が、スタンドマイクをポンポンと軽く叩く。

「えーと、今日はオレ達のライブに来てくれてありがとうございます。
短い時間ですが、皆んなで盛り上がっていきましょうっ!」

清宮先輩の挨拶が終わり、ドラムの人がスティックを鳴らし演奏が始まる。

ギターを弾きながら歌う清宮先輩。

凄くイキイキしていて楽しそうで…

こんなキラキラしている先輩、初めて見た。

「清宮先輩…カッコいい///」

無意識に私の口から言葉が零れる。

こんな素敵な人に告白されただなんて信じられないな…。

盛り上がったまま演奏が3曲終わって、清宮先輩がスタンドからマイクを外し手に持った。

「すげー楽しいーっ!皆んな、今日はオレ達に付き合ってくれてありがとうございますっ!」

飛びっきりの笑顔で挨拶をした清宮先輩。

「キャー」と女の子達の黄色い声が体育館を支配する。

「ーーで、付き合いついでに、オレのプライベートトークにも付き合って欲しいんですけど…いいかな?」

今度は照れ臭そうに笑って言うと、会場から「いいよー」と返事が返ってくる。

「アハハ…ありがとうございます。

えっと…実はオレ、今まで色んな事にいい加減な男だったんだよね。

彼女を作っては、また違う彼女を作ったりして…。

まぁ、つまり…コホンッ、一度にたくさんの女の子と付き合ってたんだよね。

中学の時にやってたバスケも、高校に入って始めたバンドも、全てがいい加減だった。

ある日、中庭をボーと眺めてたら、友達とすげー楽しそうにランチしてる子がいてさ。

メチャクチャいい顔で飯食ってんの。

その笑顔がなんか…すげー可愛くて…。

オレ、その時に人生初めての一目惚れをしたんだ///

彼女はメチャいい子で、ずっと笑ってるし、面倒見も良くて、いつも人の輪の中にいる人だった。

今のオレじゃ彼女に釣り合わないと思った。

ずっといい加減にしてきたバンドを真面目に一生懸命にやって、たくさんの女の子とも全て縁を切った。

ーーーで、勇気を出して彼女に告白したんだけど……見事にフラれちゃって。

でも、諦められなくて友達から始めてもらえるようにお願いした。

オレの方を見てもらいたくて、ちょっと強引に攻めたりもしたんだけど……

どうかな?

今日のオレを見て気持ちが変わってくれてたら嬉しいな。」

コホンッと小さく咳払いをした清宮先輩。



「神崎 萌香さん。」



名前が呼ばれたと同時に、客席にいる私にスポットライトが当てられた。



「君の事が好きです。

オレと付き合って下さい。」



体育館に清宮先輩の声だけが響き渡った。


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