メガネの王子様

これでいいんです




期末テストが終わり健ちゃんのテストの結果もなんとか平均点が取れ、あとは冬休みを待つだけとなった。

カレカノがいるリア充の子達は、クリスマスや初詣のことで話が盛り上がっている。

「萌香は、今年のクリスマスどうするの?」

リア充のひとりである陽葵は、表紙にクリスマス特集と書かれた雑誌をペラペラとめくりながら聞いてきた。

クリスマスかぁ…

毎年、友達とワイワイ騒いで、いつの間にか大晦日が来て、またワイワイと友達と騒ぎながら元旦が来て…気が付けば冬休みが終わっていて…。

今まで年齢イコール彼氏いない歴の私にはラブラブなクリスマスなんて無縁だった。

今年は……桐生に出会って、恋をして……彼女になれたらなんて思ったりしたけど…。

桐生には……嫌われちゃったから友達としても側にいられなくなった。

そのことがショックで、最近、眠れないし食欲もなくて、正直、私は疲れ切っている。

陽葵と健ちゃんには心配かけたくなくて明るく振舞ってるけど、本当はそれもキツくなってきていて……。

実は今朝から体調が悪い。

「萌香?大丈夫?顔色がよくないよ?」

気が付けば陽葵の顔がすぐ目の前にあって、じっと心配そうに覗き込まれていた。

ダメだな、私。

心配かけたくないのにバレバレなんだもん。

「…うん、大丈夫。でも、ちょっと眠いから保健室に行って来るよ。」

私は席を立ち教室を出て行く。

「心配だからついて行くよ」と陽葵は言ってくれたけど「もうすぐチャイムが鳴るから」と断った。

ひとりで長い廊下を歩き、別校舎にある保健室へと向かう。

この別校舎はグランドと体育館が見えるところに建っていて、保健室や図書室、音楽室や調理室などがある。

私は本校舎と別校舎を繋いでいる渡り廊下をフラフラと歩いていた。

今日は本当にヤバいかも…

なんだか頭がクラクラしてきて歩くのも辛くなってきた。

私は渡り廊下の壁に手を当て伝いながら歩くが、途中で力尽きて地面に座り込んでしまう。

「ヤバ、い……………。」

目の前が真っ暗になり頬に冷たい地面が触れた。

あーあ…強がらないで陽葵について来てもらったら良かったな……。

この渡り廊下って寒いから、この時期はあまり人が通らないんだよね。

更に地面に寝転がってる状態じゃ発見されにくいよね?

このままじゃ、マジで死んじゃうかも?

なんて心も体も弱ってネガティブ思考になっていたら、フッと体が宙に浮いた。

誰か私を抱き上げてくれてる。

誰?

目を開けて確認したいけど意識が朦朧としてそれさえも出来ない。

仕方ないから諦めてその人に体を預けることにした。

ゆらゆらと揺れる感覚と温かいその人の腕の中は、とても心地が良くて安心できた。

…………………え?

失いつつある意識の中で私は気付いてしまう。





この香りは………… 桐、生…?






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