メガネの王子様
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私がたくさんの女の子達を掻き分けて桐生を連れ出そうと手を伸ばしたら、大きな手が伸びてきてパシッと私の手首を掴み

「ついて来いっ!」

力強く引っ張り走って行く。

連れて来られたここは私にとって思い出の場所。

彼の秘密、彼の本当の姿を知って…

彼に…初めてキスされた場所。

人気のない校舎裏の階段に私達は来ていた。

「なんで?なんで眼鏡をかけてないのよっ!なんであんな目立つところに立ってるのよっ!バカなんじゃないのっ!」

過去に嫌な思いしてきたんでしょっ?

なのになんで⁈

「フッ、なんでお前が怒ってんの?」

桐生は私の手を離し、いつもの涼しい顔で少し笑いながら言った。

な、なんなのっ!その態度っ!

私は桐生のことが心配で助けようと思ったのにっ!

「もう、いいよっ。桐生なんて勝手にすればいいじゃんっ!」

私は腹が立ってその場を去ろうとした。

「待って!ごめんっ、俺が悪かった。」

そう言って再び私の手を取った桐生。

私が桐生のことを見上げると桐生の顔が少し赤くなった。

「ちょっと、俺のこと心配してくれたんだと思ったら…嬉しくて調子に乗った///」

な、なに///?

こんな桐生、初めて見るんだけど///

私、怒ってるのに桐生のこんな顔見たら…

許しちゃうじゃん///

「なに言ってんのよ、バカ…。」

「俺、本当にこれまでのこと反省してる。神崎のことたくさん傷つけたよな?ごめんな。」

眉を下げ唇を噛みとても悔しそうな顔をしている桐生。

「もう、その事はいいよ。この前、謝ってくれたときに反省してくれたんだって分かったから。」

「…ありがとう。」

安心したような表情になった桐生は、力尽きたかのように階段に座り込む。

「桐生?」

「…よかった。もう、許してもらえないんじゃないかって思ってた。」

桐生は弱々しく笑いながら私を見上げて言った。

弱った桐生はなんだか捨て猫みたいで可愛くて、母性本能をくすぐられるんだけどっ///

ーーーーーあ、れ?

桐生の手、なんか傷だらけじゃない?

「どうしたの?その手…。」

よく見たら桐生の手には無数の引っ掻き傷のようなものがあった。

コートや制服もなんとなくヨレてる感じがする。

……そう、ちょうど、たくさんの人に引っ張られた後みたい。

きっとここへ来るまでに、たくさん嫌な思いをしてきたんだ。

嫌な思いをするって分かってるのに、なぜ眼鏡を外して来たの?

「…これは、お前を奪い返すための代償?」

「え?」

奪い返す?へ?何から?

「俺、これからは本当の自分で勝負しようと思って眼鏡を外してきた。全力でお前を振り向かせるつもり。」

私を…振り向かせる?

「意味、分かんねーの?」

「…う、ん。」

「じゃあ、はっきり言うからちゃんと聞いとけよ。」

そう言って桐生は立ち上がり真剣な眼差しで私を見つめた。

そして





「お前のことが好きだ。」





私の心臓が生きてきた中で1番に大きく波打った瞬間だった。



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