エリート上司の甘い誘惑

まったくキャラのぶれない奴だなと感心する。
さっきは、応援するみたいなこと言ってくれたはずなのに、あれは一体なんだったんだ。


見ていると、どうやら園田も捕まったのか行く流れになっているらしい。



「さよ、どうする?」

「あー……私やめとく。飲み過ぎたし」

「え、全然飲んでなかったじゃない」

「そんなことない。かなり飲んだ」



若干わざとらしい棒読みでそう答えると、望美が変な顔をする。


だって、園田も行くなら、絶対拒否だ。
だけど……この後の約束は、どうなるだろう。


諦めモードで部長の方を見れば、うんざりとした顔で東屋くんのお誘い攻撃をいなしていたところだった。

酔ったふりで絡もうとする東屋くんの腕を、やんわりと遠ざけながらはっきりと、言ったのだ。



「悪いが、先約がある」



大きくはないのに、やけにくっきりと通る声だ、多分全員に聞こえただろう。
一瞬だけ沈黙が生まれたが、すぐに周囲はさわさわとざわめき始める。


酒の勢いで雪崩れ込みそうな雰囲気だったのが、若干の冷静さが周囲に戻った。



「藤堂部長行かないって、どうする?」

「東屋くんが行くみたいだし私は行くよー」


女子同士の会話がちらちら聞こえ、それに呼応するようにあちこちで相談しあうような声が聞こえる。
その空気の中、ぱちりと部長と目が合った。


それだけじゃない。
そのまま真直ぐ、私に向かって歩いてきた。
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