【NEVER】

「古閑陽翔。」

……???

なんか、イキナリ知らない単語を浴びせられたんだけど……。

またしても、"え?" と声が漏れた。

「俺の名前、古閑陽翔。

名乗ったんだから、答えろ。お前は?」

「……壺倉。」

「壺倉?」

「梨那。」

圧に押されてフルネーム言っちゃった、名字だけしか言わないつもりでいたのに。

「壺倉、か。何年?」

「1年ですけど……って、何なんですか?
私、急いでるんですけど。」

ねぇ、私 走ってたじゃん?
だから、貴方にぶつかったんじゃん?

それくらい分かるでしょ、私が悪いのはもう十分に分かったから……。

古閑さんはズボンのポケットから携帯を取り出して 時間を確認した。

「あ、時間。」

お前も急いでたんかい、思わず 心の中でツッコんでしまう。

「お互い時間もあることですし、今日のところはこの辺で……」

本当は何も言わずに 学校へ向かいたいところ。でも、そうできないのは古閑さんに腕を掴まれているから。

「……え?」

いや、文脈読んで?
後に続く言葉はどう考えても "勘弁してください" でしょう。

「お前 学校に行くんじゃないのか?」

「学校に行きますよ、当たり前じゃないですか。」

ってか、私のこと "お前" って呼ぶなら わざわざ名前聞かなくても良かったよね?

「なら、一緒に行けば良くないか?」

「はぁ?」

何で一緒に登校するんだ?
この人 社会人でsy……って、よく見れば この人も制服着てる。着崩し過ぎていて分からなかった。

「え?」

「いや、すみません、古閑さんが学生だと思えなくて……」

苦し紛れの言い訳、でも 本音だから 許してほしい。

「一緒に登校するにしても 手は離してください。」

「ん?あぁ、悪い 忘れてた。」

忘れてた?
ヤバイでしょ、何をどう 忘れんのよ。手の感覚どうなってんのよ。

「……で、何で名字で呼ぶ?」

やっと、手首を離してもらった。

……ちょっと、痛かったな。
力加減とか知らないのかな、心なしか 赤くなってるよ。

「おい、聞いてんのか?」

「……はい?」

"はぁ" と溜息をつかれた。
いや、私だって 溜息つきたいわ!

「名字じゃなくて 下の名前で呼べ。」

何故に命令口調?

「わかりました、陽翔さん。
わかったんで、早く行きましょう?」

本当 SHR開始のチャイム鳴りそう。

さっき、チャイムが鳴る5分前に流れ出す謎の音楽も流れ終わったし……。
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