光闇

1.出会い

「じゃあ母さん、行ってくる」

「えぇ、いってらっしゃい。気を付けてねレオル」

小さな民家に少年――レオルとその母。

レオルの片手は小さな鞄を持ち、腰には短刀が差してあった。



今は夜だが、空に雲一つない。おかげで辺りは月に照らされ見回しがきく。
しかしレオルは気が抜けない。この辺りは魔物が出るからだ。
…いや、この時間帯はどこでも出るだろう。
だから護身用の剣は必要だ。

数分歩いた所で目的地に着く。


ドーム型の小さな建物。

看板には薄れた字で『天体観測所』と書かれていた。
レオルの仕事はここでの毎日の天体観測。

カチャリ

観測所の鍵を開け中に入る。
中は薄暗いが、電気をつけては観測しにくい。いつもの位置まで行って望遠鏡を覗いた。

(おぉ…)

今日も綺麗な星を見、観測結果を黙々と紙に写す。月の結果を書くところで手が止まった。

(満月まで…あと、2日か…)


満月――それはレオルにとって重大な日であった。
何故なら―――


カンッカンッ


鉄でできている天体観測所の階段。そこを誰かが登る音がする。

別にここは、誰でも入る事ができる――が。滅多に人なんて来ない。しかも、階段を登る足音が早い。

(…誰だ?足音が、段々近づいてくる……)


そのとき。


ガチャッ


乱暴に扉が開かれた。



「…っ、はぁ…。……え?」



入ってきたのは息を切らした少女だった。
金髪、青目。そしてお姫様が着てるようなドレスを身にまとっていた。
この辺りで見かけない子だ。


「あのさ…大丈夫…?」


見るからに辛そうな少女に手をさしのべる。

ここに誰もいないと思っていたのか、少女の顔から驚きの色が消えない。


「…はい…っ、あの!」

差し伸べた手を勢いよく握り返し、しゃべり出す。

「な、何?」

彼女の背後からまた、階段を上る音がする。それも沢山の。

その足音が近づく前に彼女は早口で言った。



「助けてくださいっ…」



「…はぁ?」
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