ここからはじまる恋
食事を終えると、小さな封筒の中身を確認する。ソファでくつろぐお父さんと、食事の後片づけをするお母さんにはバレないように、こっそりと……。

封筒には、名刺が一枚と、優待券が。

『Bar ブルーヘブン
バーテンダー 空ーSoraー』

あの受付の男性、バーテンダーなの!? しかも、名刺に書かれてある住所を見ると、‘‘B.C. square TOKYO’’の五十四階にあるBarだなんて、かっこよすぎやしませんか!?

……空さん、かぁ……。

柔らかい声や優しい笑顔を思い出し、だらしなく頰が緩んだ。

優待券が入っている……ということは、Barに来てくださいって、ことだよね?

でも、ひとりでBarなんて行ったことがないよ。

友だちを誘う?

いやいや。みんな空さんに首ったけになること、間違いなし。ライバルは増やしたくないな。

由良を連れて行く?

いやいや。大学生になった……とはいえ、未成年は連れて行けない。飲酒できないし。

さすがに両親は誘えない。思い切って私ひとりで行くんだから! 失恋には新しい恋をするのがいちばん!

さぁ、行け! 紗良! 一歩、踏み出せば、空さんの作る、おいしいカクテルが待っているのだから。






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