ここからはじまる恋
『どうぞ、ごゆっくり』と言われても……。初めてのBarは、緊張してなんだか落ち着かない。何度か通えば、癒しの空間になるのだろうけれど。

土曜日の夜だからか、店内はいつの間にか満席になっていた。窓の外に目をやると、宝石を散りばめたかのような、都会の夜景が広がっている。

夜景が一望できるカウンター席はカップルシートになっていて、私みたいなおひとり様は座ることができない。

いつか、あのカウンター席に、空さんと……なんて妄想しながら、ゆっくりとカクテルを口にした。

「かわいいお客様に」

その声にハッとして、視線を送る。空さんが私にチョコレートを持ってきてくれた。

「これ、僕の大好きなチョコレートなんです。紗良さんのお口に合えばいいな」

その笑みは、反則。頬が火照るから、残りのカクテルを一気に飲み干した。

「おかわりは、いかがですか?」

「甘くて、口当たりのよいものを……」

空さんの前で、背伸びをしたいと思うけれど、辛口のカクテルは飲めないし。空さんの笑みや声みたいな、うんと甘いのをお願いします!

「かしこまりました」



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