ここからはじまる恋
実は、お見合い大作戦

今どこにいるのかわからない私は、新庄先生に送ってもらうしかなかった。無口な背中に黙ってついていく。

大きな背中。空さんは、小柄で細身だけれど、新庄先生は背が高くて、がっしりとした体格の持ち主だ。

私みたいなチビだと、ひょいっと持ち上げそう。

あ……。昨日のこと、記憶にないけれど、ここまでどうやって運んでくれたのかな? おんぶ? お姫様だっこ? どちらにしても、恥ずかしくてたまらない。

部屋を出ると、マンションというよりは、高級ホテルのような雰囲気だ。新庄先生が鍵を閉めた部屋以外に、もうひとつ、別の部屋があった。

廊下を歩いて向かった先には、大きな扉に鍵穴がひとつ。新庄先生が鍵を開けると、扉が開いた。

え? これが、エレベーター? 一緒に乗り込んで、さらにびっくりした。開閉ボタンはあるものの、行き先階ボタンが、ひとつもない。

どこに連れて行かれるのだろう? そもそも、何階にいたのかな、私……。

苦しいくらいの沈黙を過ぎて、エレベーターが止まった。降りると、たくさんの車が並んでいる。どうやらここは駐車場のようだ。

高級車たちを尻目に、新庄先生の後に続くと、また別のエレベーターに乗り込んだ。このエレベーターは、どこにでもある普通のエレベーターだ。

目指すは、一階。どうやら私は、ビルかホテルの高層階から、駐車場のある地下階まで降りて、さらに別のエレベーターに乗り継ぎ、地上に出るようだ。

なんだか、異世界にいるような、不思議な気持ちがした。



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