ここからはじまる恋

「んー」

ここは、どこ? 寝ぼけまなこで確認をする。広い部屋、真っ白な壁紙、キングサイズベッド……。このシチュエーション、前にも……。

ハッと息を飲んで、ガバッと起き上がる。なんだかめまいがして、こめかみを押さえた。

「紗良さん、あなたって人は……」

その声に視線を送ると、新庄先生が呆れ顔で、コップに入った水を私に差し出していた。軽く会釈をして、水を受け取ると、ゆっくりと口にふくんだ。

「私の忠告が、聞こえなかったのですか?」

「……いえ。でも、空さんが私になにをしたというのですか?」

今の状況が、わからない。それどころか、空さんのBarで、ノンアルコールカクテルの二杯目を飲み干したのかさえ、記憶にない。

小さな声で聞き返すと、呆れ顔の新庄先生が、ため息をついた。

「とにかく、空には近づかない方がいい」

「どうしてですか?」

理由も言わず、私と空さんの仲を裂こうとする新庄先生に納得がいかない。

「空に、なにをされてもいいと言うのなら、勝手にすればいい」

『なにをされても』って……。空さんは、私になにもしていない。今日だって、急に眠くなっただけなんだから……。

あれ? どうして今日も、新庄先生にお世話になっているのだろう、私は!

もし、眠ってしまったのなら、空さんが助けてくれるはずなのに……。

どうして?


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