癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
「君とは縁がなかった。
俺は俺を応援してくれる人でなければ結婚は考えない。」

と言って別れた。

彼女と付き合っていた2年間はムダなものに思えてならない。
外見や肩書で男を選ぶような女ばかりに声をかけられてきたせいか、
どうも女性が信じられない。

俺の仕事が軌道にのると、
立場上、いろいろなパーティーに顔を出さなければならなくなった。
パーティーに行く先々で縁談を勧められ、
パートナーの必要性は感じていた。

親父も親父で、なかなか結婚しようとしない俺を
なんとかしたかったらしい。
兄のように幸せな家庭を築いて欲しかったんだろう。
ちょうどB.C. square Tokyoが出来上がるころ、
親父はこんなことを言い出した。

「なぁ、悟。お前が女性を避けているのはわかる。
詳しくは聞かないが、結婚しようと思っていた女性と
何かあったんだろう?
だからって、このままでいいわけはない。
社長という立場になれば、お前だってわかるだろう?」

「あぁ。」

「俺から無理に縁談は進めない。
女性が信じられないんなら、今の立場じゃない、
別の形でもっと人間観察してみたらどうか。」

「人間観察?」

「上に立つ以上、女性であれ、男性であれ、
人を見極めていくには大切なことだ。」

「でも、どうやって?」

「うちの本社ビルとなるB.C. square Tokyoのことは知っているな。」
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