癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
「今日は、ありがとうございました。
お食事もおいしかったし、
こんな素敵な体験をさせてもらえてうれしかったです。
田中さんと悟さんが同一人物というのには驚きましたけど、
悟さんといろいろとお話ができて本当に楽しかったです。
なんだかシンデレラになった気分です。」

「そう言ってもらうと何と言って答えたらいいのかな…。
じゃあ、王子様になった気分でお姫様をお城まで送らせて。」

「なんだかその言葉は逆に現実に戻っちゃいそうです。
私の住んでいるところはお城ではなくて、
安いアパートですから…。
それに、悟さん、ワインをお飲みでしたよね。
まだ時間も早いので私一人で帰れます。大丈夫ですよ。」

「俺のことなら大丈夫。
最初から君を送っていくつもりで
ノンアルコールのものをもらっていたから。
君の方こそ、履きなれない靴じゃ大変だろう?」

「ではお言葉に甘えます。」

結局、悟さんに車でアパートまで送ってもらった。
アパートの前で車を止めると、
彼は名刺を取り出し、
その裏にプライベートの電話番号とアドレスを書いて、
渡してくれた。

「会社の番号だと小林がまた、
何か君に嫌な思いをさせるようなことを言うかもしれないから。」

「ありがとうございます。おやすみなさい。」

「おやすみ。」



自分の部屋に入る。

田中さんと松浦社長が同一人物だったという驚き。

悟さんが言っていた
『まみちゃん、俺は管理の田中さんになって、君を見つけた。
カフェで、笑顔で応対している姿や外国人観光客に
親切に情報を伝えている姿。
井口のところでボランティアで通訳をしている姿。
そして、偶然ではあったけど、白石真美奈としての仕事。
正直、君に対する感情が恋なのかどうなのかもわからない。
でも、松浦として仕事をしているとき、
管理スタッフの田中に対するときのように接することができたらと思う。』
というあのことば。

何より、私の中の彼に対する感情。

いろいろなことが気になって、その日はうまく寝付けなかった。




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