癒しの田中さんとカフェのまみちゃん
悟さんと一緒にマスターのところに話に行く日が来た。

「真美奈、じゃあ行こうか。」

「はい。」


「おはようございます。」

シアトルアップルのスタッフルームのドアを開けた。
ちょうどマスターしかいらっしゃらなかった。

「あぁ、まみちゃん、おはよう。
あれ、田中さんも。おはようございます。」

悟さんはスーツ姿で松浦社長なのに、
マスターは彼を「田中さん」と呼んだ。

「おはようございます。桜井さん。」

「田中さんがこうしてこちらにお見えになるというのは、
まみちゃんのことですか?」

「さすが、桜井さん。実は真美奈と婚約しまして…」

「おめでとうございます。
まみちゃんも素敵な方と結婚できることになってよかったね。」

「あの、マスター、それで来年の5月で
ここを辞めさせていただきたくて…。」

「えっ、そんなでいいの?」

「真美奈には、結婚するまでは
ここで働いていいと言ってあるんです。
6月に式をと考えているので、ご心配いりません。
ここは真美奈にとっても俺にとっても大切な場所ですし…」

「わかりました。」

「これからも、真美奈のこと、よろしくお願いします。
カフェを離れても同じビルにいれば、いろいろと関わりもあるでしょうし。」

「ええ、もちろん。」

私が口を挟む間もなくスムーズに話が進んだ。

「じゃぁ、真美奈、俺はこれで失礼するから。
桜井さん、開店前にお時間とってすみません。
ありがとうございます。では、よろしくお願いします。」

悟さんは自分の職場へ向かった。

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