自殺カタログ
決めた日
強い風が吹いて紺色のスカートがなびいた。


あたしは下着が見えそうになるのを隠そうともしなかった。


そもそもここにはあたし以外の誰もいない。


学校の屋上。


今日の午前中にここでクラス写真を撮った後、その鍵が閉め忘れられている事に気が付いていた。


普段は立ち入り禁止のこの場所にあたしがいるなんて、きっと誰も気が付いていないだろう。


そもそもあたしは2年3組の中では空気のような存在だった。


いや、空気なら良い方か。


空気になりたくてもなれず、ストレスのはけ口にされていたのだ。


2年3組のクラスカースト、ダントツの最下位はこのあたしだった。


そう思って自嘲気味に笑った。


屋上のフェンスを乗り越えて、人が一人立てるギリギリのスペースにあたしは立っている。


こんな状況で笑みが浮かぶなんて思ってもいなかった。


テレビのニュースでイジメを苦にした自殺を見るたび、あぁ、この子は泣きながら、叫びながら死んでいったんだろうなと思っていた。


毎日毎日苦しくて、少しでもその苦しみから解放されたくて。


だけど誰にも相談できなくて。


そして追い詰められて自らの命を絶つのだ。
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