自殺カタログ
☆☆☆

院内は恐ろしいほどに静まりかえっていた。


いや、正確には他の場所からは会話が聞こえてきている。


けれどこの部屋だけは誰も会話をしていないのだ。


真っ白なベッドの上に横たわっている光がいる。


顔中包帯を巻かれていて、その顔は特定できない。


だけど、担任の先生がこの病室にいることで、それが光なのだと理解できた。


ベッドの周りには光の家族がいる。


みんな息を殺して光の様子を見守っている。


だけどさっきから光はピクリとも動かない。


光の体に繋がれている機械が光の心音を示しているが、本当に生きているのか不思議に感じるくらいだった。


あたしたちは息苦しさを感じて病室を出た。


「光が1人で火事に巻き込まれたんだね」


理央がそう言った。


見たところそんな様子だった。


夜中の火事だったというのに、他の家族はみんな助かっている。


その事実にあたしは小さく身震いをした。
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