自殺カタログ
あたしは重たい気分でリビングのドアを開けた。


「よぉ芽衣!」


娘の事なんて何も知らない父親が、アロハシャツを着てソファに座っている。


テーブルの上には沢山の沖縄土産が置かれていた。


ここ数日間は沖縄で過ごしていたようだ。


あたしがイジメられていたことも、『自殺カタログ』であの女を殺した事も知らない、幸せな人だ。


「お帰り、お父さん」


そう言う声がどうしてもため息交じりになってしまう。


「どうした元気がなさそうだな? 学校が嫌なのか? それならもう辞めちまえ! 金ならいくらでもあるぞ!!」


そう言い、豪快な笑い声を上げるお父さん。


金がある事なんて知ってるよ。


それ所か、あたしは人の命だって左右できる凶器を持っている。


お父さんに近づくとお酒の匂いがした。


だからこんなに調子がよさそうなんだ。


「お父さん、どれだけ飲んだの?」


「あぁ? 沢山だよ、たーくさん!!」


そう言い、また笑い声を上げる。


その声を聞くたびに頭が痛くなる。
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