自殺カタログ
赤い車が走って来るのが見えた。


青信号をスピードを落とさずに走って来る。


少年が歩道の中央で足を止めた。


まるでその時を待っているかのように、動かない。


そして次の瞬間……少年の体が大きく跳ねあげられた。


車のブレーキ音が住宅街に響き渡る。


タイヤが削れて、ゴムの燃えるような匂いが漂ってくる。


少年の体はまるでおもちゃのように跳ねあげられ、そのままコンクリートの上に落下した。


その瞬間、少年はこちらに顔を向けていた。


その顔がコンクリートに衝突すると目玉が飛び出し、顔の半分がグシャッという音と共に潰れて消えた。


周囲に子供たちの絶叫がこだまする中、あたしは事故現場に背を向けて歩き出したのだった。
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