いつか時が戻るまで。
記憶がなくなるの?
「……」
「あっ、大丈夫ですか!?意識取り戻しました?」
「……?」
「あ、起き上がらなくていいですよ。
えっと…神田さん?無事でよかったです」
「どうして僕の名前を……」
「後ろに書いてありますよ」
「ああ…。
あなたはどうしてここに?」
さっきまでコーヒー店で働いていた彼女が、なぜここにいるのか。
「これ。神田さんが忘れていったので、追いつける距離にいたので届けようと思って走って言ったら、神田さん、いきなり倒れだしてびっくりしましたよ」
「あ。すみません」

忘れ物。
僕は何を忘れたかも忘れた。


「ちょっと、涼大くんっ!
また入院って…大丈夫なの!?」
「あ。お母さまですか?
たった今目を覚ましました。あとはお母さんが見てあげてください」
「まぁ……ありがとう。
お名前は?」
「井上美帆です」
井上美帆。覚えておこう。
この女性の名前。

「可愛い名前ね。
本当にありがとう。」
「いえいえ。では、仕事に戻りますね」
「あ、ありがとうございました」
「いいえ。またお店に来てくださいね」

なんていい人だ。
仕事の途中なのにずっと付きっきりでいてくれて、しかもまた来てねなんて。
ルックスも完璧な女性。

まさしく、僕の好みだ。
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