キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】




電車が動き始めると、碧音君はiPodのイヤホンを耳に装着したから、話しかけられなくなってしまった。


ガタン、ゴトン、規則的な揺れが足元に伝わってくる。


車内は仕事帰りのおじさんお姉さん方が大半を占めていて、『今日も1日、お疲れ様でした』と心中で労いの言葉を呟いた。


窓には車内の様子が反射して映っているから、外の景色を見ようとしても見られない。


1つ、2つ3つと各駅で停車する度、人が減っていき、私達の駅ももうすぐだと感覚で分かる。


もともと家に帰ったらお風呂入って番組録画してさっさと寝ようと思ってたけど、今日はすぐ眠れそうにない。


小さな欠伸を溢す碧音君が可愛くて、つい口元が緩む。


静かな空間が眠気を誘うよね。私は碧音君達のバンドの曲を頭の中で何度もリピート。


「次はー、南豊山ー、南豊山。お降りの際は、足元にお気をつけください」


「着いたね」


「ああ」


人の波にのって改札を通り、駅を出た。


「わあ!暗いね?ここ1人で帰るのかー。ちょっと心細くない?怖いな、不審者現れたらどうしよう?」


不安な表情をしてみる。



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