キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


明日の方が有名なインディーズバンドもゲストとして参加するし、出演するバンドのレベル自体もアマチュアとは言え高い。


だから今日は明日出演出来る程のレベルではないけどライブをやりたいバンド、星渚さん達みたいに本番の予行として出るバンドが主にやってくれる。


でも観客の数も多いし、知名度を上げるにはもってこいの場所だ。


「菜流、私に電話してきた時もずっと悔しがってたよ。風邪引いた自分を呪いたいって」


「こえーなおい」


「菜流がライブに来てくれるのも嬉しいけど、そのせいで風邪が悪化したら俺は立ち直れない」


額に手を当て至極真面目な表情で言う星渚さん。


大袈裟だとは口が裂けても言えないのは皐月も同じだと思う。


呆れつつ今日のライブで歌ってくれる曲のことを話していると、そこへ。


「皆、おまたせ」


頬を緩ませる藍の隣には。


「初めまして、波江春です」


白のバルーンスカートと対称的な黒髪を揺らし、恥ずかしそうにはにかむ線の細い女の人――波江さんがいた。


雰囲気が藍にそっくり。

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