キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【ピエロの罠】



「藍、顔にやけっぱなし」


黄色の線が入った光沢のある黒のネクタイを緩めながら隣に立つ星渚。


「そうか?」


星渚に指摘され自分の頬をペタリ、手で触ってみる。


「そりゃあ、にやけちまうよな。波江さんが来てくれたんだから」


「良かったな、藍」


皐月の隣にいた碧音が皐月の肩を押し退けひょっこり顔を出す。


「来られて安心したよ。今回のライブには間に合うかギリギリだったんでしょ?」


「リハビリと元の生活に戻るための準備が手間取ってたんだ」


「明日も来るっつってたっけ?」


「ああ。来る予定」


「明日こそ来てもらわなきゃだしな!」


皐月にバシバシ背中を叩かれる。力を加減してくれ。


「明日歌に波江さんを任せて何の問題もなく終わるか心配」


「碧音、明日歌ちゃん何回もライブには来てくれてるんだから大丈夫」


あの子、危なっかしいところもあるけど根はしっかりしてる子だからさ。碧音も本当は分かってるくせに。


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