幾久しく、君を想って。
出来るだけ大股で歩いて行こう…と思っていても、久しぶりに飲んだアルコールのせいで、そんなに速く歩けそうにもない。


黙々と歩くことだけに集中するのも変な気がしてきて、松永さんの家は何処なんですか?と尋ねた。


「俺ですか?駅前のバス停から十五分くらい揺られた先にある市営アパートに住んでます」


「市営ですか。じゃあ家賃はリーズナブルですね」


「それが独身だと案外に家賃は高いんですよ。控除がない分、定額よりも引き上げられてしまって」


「へぇー、世の中って甘くはないんですね」


初めて聞いたな…と思いつつ、また少し会話が途切れる。

線路のガード下を歩きだすと、ブーツの音と彼のスニーカーの靴音だけが響き渡っている。


「ここが引っ手繰りと痴漢の名所なんですか?」


そう言えば、十年くらい前に比べたら少しはライトが暗くなったかも…と思う。


「一人歩きの女性やお年寄りなんかが狙われてるそうですよ」


「…よく知ってますね」


「会社の回報に載ってたので。俺はそれを読んで、物騒だな…と思っただけです」


「本当にそうですよね。私も今度から気をつけないと」


しみじみ答えると、くるりと後ろを振り向いた人が聞いてくる。



「今度から……ということは、また『アラフォー部会』に参加するということですか?」


「…えっ?……あの…」


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