切手に想いを添えて
3
家に帰り、私はなんとなくストックブックを開けてみた。



なんだか見ているだけでほんわかしてくるのは、あの会長さんからお祖母ちゃんの話を聞いたからだ。





好きな人に会うために何度も郵便局に通ったんだろうな~

切手が増す度に、おばあちゃんの淡い気持ちも、おばあちゃんの胸の中で増していったんだろうな~





そんな事を考えれば、胸の中がなんとも言えない温かいむずむずした気持ちになる…


しかも、徐々にこの切手達が愛おしくも感じてきて…


切手を使うのがなんだか勿体ないような気もしてくる…





全く興味がなくて始めの数ページしかめくっていなかったが、他にどんな切手があるのか興味が沸いて、1ページ1ページ丁寧にめくっていく。


「色んな切手があるんだな~
あっ、この切手綺麗~」


結構な数の切手を楽しみ最後のページに辿り着いたとき、切手とは違う物が顔を覗かせた。



「………?」



最後のページに挟まっていたのは色褪せた茶色い封筒だった。



「なんでここに入れてあるんだろ?」





そこから取り出して手に取ってみる。


裏を介しても宛名も差出人の名前も書いてない。


いや…よくよく目を凝らすと何か書いてあったような跡が…

あるような気もするけど…


封筒が劣化し過ぎていて判別出来ない…


あと確認出来るのは、表面にサザンカの切手が貼ってあることだけだ。


しかもそのサザンカの切手…


剥がれかけていて、その下にはまた別の切手が貼ってあった。


まるで下の切手を隠すように…






「どうして二重に貼ってるあるの?」


切手のことは気になったが、それ以上に中身が気になる…






一旦切手のことは置いておくことにして、手紙をひっくり返した。


手紙は開いていたけれど、一度は手紙に封がされていた痕跡が見受けられた。


手紙の中を覗くと、これまた色褪せた便箋らしきものが入っている。


それを取り出して開いてみると、とても綺麗な字の列が並んでいた。










そして、私は後悔する…

手紙を見つけてしまったことに…

いや、見つけてしまっただけたらいい…

なら、手紙を読んでしまったことに…

いや、手紙を読んでしまっただけならいい…

きっと、おばあちゃんの気持ちを知ってしまったことに、私は後悔したのだ…









< 16 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop